天安からアンニョン

日々の思いや韓流情報などをエッセイ風に書きます。韓国からの発信です。

床屋(2) _ 筆者のエッセイ0005

3月9日ごろに書いた「床屋」。今回はその続きです。



「ふぃーっ」と汗を拭きながら地下の階段を一目散にかけあがって外に出るところまでは
3月9日のブログに書いた。

実はこれには後日談があって
「それを書かなきゃ床屋エピソード、なんのおもしろみもないじゃない」と
かみさんに言われてしまった。


あの日(といっても25年も前の話だ)、わたしが慌てふためいて帰ってくる姿に、
かみさんは肝をつぶしたそうだ。
わたしはといえば、
片方の靴下はきちんと足にあったが、もう一方のほうは手に持っていたらしい。
つまりあの床屋で靴下を脱がせるところまで進行していたということだ。

そして足のマッサージか何かすることになっていたのだろう。
そしてそれから、、、。
いやこれはわたしの単なる妄想だったのかもしれない。
散髪プラスマッサージのいたって健全な施設だったのかもしれない。

しかし重要なことは、わたしがフーゾク床屋だと認識したことであり、
ミニスカートのアガシがわたしの視界のはずれのほうで
そそくさと歩き去る物腰から判断するに、
わたしの妄想はあながち外れてはいないだろうという確信があることである。

純真なわたしは、声もふるえていたのかもしれない。
顔はすっかり青ざめていたのかもしれない。
情けないといわれれば情けない格好ではあるが、
こんな男もいるんだよという点では、声を大にして叫びたい気もする。

「ばかな奴め」と多くの人は言うだろう。
ばかだろうがちょんだろうが、これでも教師の端くれとして
なんとかやれてるじゃないか。
世渡りの裏表をほとんど知らない(世間ずれしていない)
ナマの男の姿だと思ってご理解いただければ幸いである。

それから数か月間、あの床屋のあるシフンドンに住んでいたが、
あれ以来一度もくだんの床屋に入らなかったことはいうまでもない。

その後いくらも経たないうちに、
縁あって四回ほどの面接試験のあと三星綜合研修院に職を得た。
アパートも提供してくれるし、
会社への出退勤は専用の乗用車での送り迎えという至れり尽くせりの待遇だった。
 
 「アパートは27坪なら大丈夫ですかね」
 「あ、はい、大丈夫ですよ」

サムソンの担当者と妻との電話でのやりとりである。
シフンドンの5坪にも満たない部屋から
急遽ソウル・江南(ガンナム)の27坪のアパートに引っ越しすることになったわけである。

「夢か幻か」とはまさにこういうことをいうのであろう。

わたしはビザを新しく取ってこないといけないためすぐ日本へ飛び、
その期間中に引っ越しその他の雑務はすべて妻がやってくれた。
肉体的には大変だったけど、なにせ心が踊っているから、
ルンルン気分で一点の落ち度もなく引っ越し完了となった。

二週間後、比較的早く取れたビザをもって、わたしは韓国に帰ってきた。

金浦からリムジンでガンナムバスターミナルまで来て、
そこからは歩いてわが家へ。

新盤浦(シンバンポ)の韓信(ハンシン)アパート333棟。
並木道が続く。
目指す333棟が見えてくる。
右も左もアパートで道を行き交う人もまばらだ。
車もゆっくりと走っている。

ここがこれからオレの住むアパートか。
「しっかりやれよ」とわたしの中のもう一人のわたしが言う。
「わかったよ、しっかりやるさ」といいながら
もう一人のわたしは笑みをどうしてもとめることができない。
こうしてガンナム生活が始まったのである。

髪も伸びてきた。
散髪しないといけない。
床屋のくるくる回る回転灯はあちこちに見える。

しかもここは韓国一の大都会・江南だ。
下手してフーゾク床屋に入ってしまう危険性はシフンドンの十倍もあるであろう。

そこでわたしは考えた。
ここは大事をとってかみさんを連れて床屋探しをしようと。

「床屋ぐらい一人で行けるでしょ」と、かなり乗り気でない妻であったが、
シフンドンでのあの「事件」以来、
若干トラウマになってるんだとわが内部事情を説明すると、
かみさんはしぶしぶいっしょに外に出てくれた。

赤ちゃん以下の男だとあいそもなにも完全につかしてしまっていたはずだが、
あなただけが頼りなんだというわたしの真剣な表情に押された格好で、
そうした見下すような態度はミジンも見せることはなかった。

一、二軒物色したあと、
外からも中の様子が全部見える大きなガラスドアのある店に入り、
価格表にも目をやると、かみさん、ここはOKねと目で合図するなり
「あとは一人で髪切って、一人で帰ってくるのよ」
と言って出て行くのだった。

ミニスカートのアガシもいないし、
ここは大丈夫だろうなどと考えながら、
かみさんの後ろ姿を見るともなく見ていると、

「イリオセヨ(どうぞこちらへ)」

と店のオヤジが力強く声をかけるのだった。
わたしはどっかりと散髪用の椅子に沈みこんだ。
安心感もあり、気分もよくてほとんど眠りこけているうちに散髪は終わった。

7000ウォンだったかを払って「コマプスムニダ」(ありがとう)と言って店を出た。

赤ちゃんのごとく妻に伴われて行った「床屋探し」の一件は、
無事落着となった次第である。


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コメント

理解のあるかみさんで
うらやましいです。

そう言ってもらえるとありがたいです。
どうもです。

ばかなやつめ、とは
絶対言いません。(笑)

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Author:treenamu
韓国在住の日本人で、山歩きやサッカー、リフティングなどが好きです。小説・随筆なども書いてます。鴨長明、ヘッセ、バルザック、モーム、チャンドラーなどが好きです。スローライフがモットーです。

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