天安からアンニョン

日々の思いや韓流情報などをエッセイ風に書きます。韓国からの発信です。

アガヤ _ 筆者のエッセイ0021

 韓国語のなかには、「エーッ、なんで?」ということばの使い方をすることがある。「なんでこんなときにこんなことばを使うの?」「信じらんない」という感じである。その一つがこの「アガヤ」。アガというのは赤ちゃんという意味であり、ヤというのは「~ちゃん」というくらいの語である。ということで「アガヤ」は、「赤ちゃんちゃん」ということだが、これではちょっとおかしいから「赤ちゃんクン」単に「赤ちゃん」ぐらいの意味になるわけである。
 これだけならなんら不思議の点はないのだが、これを赤ちゃんに対してでなく大のおとなに対して使うから「信じられない」のである。お嫁さんとしてはいってきた女性に対して、シブモ(夫のほうの親)が使う。とくにシオモニ(夫の母親、姑)がよく使うのである。かわいい赤子をはやく生んでほしいという気持ちから使われるのか、「わたしのかわいいひと」という感覚から使われるのかはわからない。
 さらに、お嫁さんが赤ちゃんを生んで、すくすくと育ってゆく。子どもが二、三歳ほどになって、なにかの集まりなどにつれてゆく。するとそこでは、自分の子どもの名前でその子の母親(自分)のことを呼ぶこともめずらしくはない。つまりこうだ。母親の名前がミギョンで、その子の名がユリだとする。まわりの女性たちがミギョンさんをさして「ユリや」というのである。「ユリや、それどこで買ったの?」「きのうデパートのバーゲンセールで買ったのよ」といった具合いである。子どもにでなく母親に対して子どもの名前を使うのである。
 すべての女性の集まりでこうなるのではないが、このように子どもの名前を母親に使うケースをわたしはなんども見た。非常に不思議である。子どもを呼んでいるのか母親をさしているのかは、その場の空気ですぐにわかるようになっている。その点は心配いらない。
 この現象は地域によってもちがうであろうし、集まる女性たちの性格や雰囲気などによってもかわってくるものであり、韓国においても多少例外的といえるかもしれない。ふつうには「ユリオンマ」といってユリちゃんの母親を呼ぶ。「オンマ」は「お母さん」の意であるからユリのお母さんという意味である。この使い方はとても便利で、適度の親しさも表わせるし、ごく自然に相手(とくに奥さん)のことを呼べる。
 高橋さん夫妻の間に「ジョンホ」という名の子がいるとする。わたしが夫の高橋さんを呼ぶ場合、「たかはしさん」といえばいいが、奥さんを呼ぶときも「たかはしさん」となって、これだとかなりよそよそしい響きがしてしまう。よく知っている夫婦同士が集まってお茶会などリラックスして時間を楽しむというような場合、こんなときにはやはり「ジョンホ オンマ」というのがいちばんいい。よそよそしくもないし、かといって女性の名前たとえば「さちこ」さんなどと呼んだらナマメカシクなってしまう。「ジョンホ オンマ」というのが、こういう場合はもっともふさわしい呼び方ということになろう。日本語で言えば、「たくまクンのお母さん」ってな感じだが、これだとなんとなく間が抜けた感じだ。
 子どもたちが友だちのお母さんを呼ぶときならいざしらず、母親同士あるいは大の大人がこういう言い方はしないだろう。日本語としては普通は使用しない言い方ということだ。わたしの友人同士の家族が集まったりするときには、わたしもよくこの表現を使う。日本人夫婦でも、こちらに住んでいれば韓国の習慣にのっとって、この言い方をすることが多い。チイちゃんという子がいたとすると、この子の母親は「チイちゃん オンマ」となり、父親は「チイちゃん アッパ」となる。完全に韓国語式でやれば、「チイ オンマ」「チイ アッパ」となるが、日本人同士なのでここはどうしても「ちゃん」をつけて「チイちゃん オンマ」のようになるのが自然だ。
 日本語と韓国語のチャンポンということになるが、自然にそうなってしまう。自然にそうなってしまうということは、「それでいいのだ」、ということであろう。日本語を解しない韓国の人がそばで聞くとしたら、どういう印象をもつものだろうか。気になるところだが、まだそれを確認したことはない。もっとも、「ありがとう」「こんにちは」「ちゃん」ぐらいは、たいていの韓国人が知っているので、「チイちゃんオンマ」と聞いてもそれほどの違和感はないのかもしれない。



                                                                               (『おしょうしな韓国』より)


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韓国在住の日本人で、山歩きやサッカー、リフティングなどが好きです。小説・随筆なども書いてます。鴨長明、ヘッセ、バルザック、モーム、チャンドラーなどが好きです。スローライフがモットーです。

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