天安からアンニョン

日々の思いや韓流情報などをエッセイ風に書きます。韓国からの発信です。

カムホンシ( 熟した柿 ) _ 筆者のエッセイ0018

こちらで生活していて「あれっ」と思うことがままあるが、熟した柿が商品として八百屋の棚にちょこんとおいてあるのを見たときにはさすがに驚いたものだ。はじめは、八百屋のおやじが、商売がうまくいかないために、柿があんなにぶよぶよになるまでほったらかしておいてあるものと思っていた。ところが、秋のその季節になると、どこの八百屋にも熟したが柿が並ぶのである。おかしいな、それにしてもやる気のない八百屋が多すぎやしないか。どうも不思議に思い、妻に聞いてみた。韓国生活三年目ぐらいだったかと思う。

 「あれはれっきとした商品よ。カムホンシ、おいしいじゃない。」

 「ええ!? あれ、売り物なんだ」

 たしかに食べたらおいしかろう。しかし想像だにしていないことだった。日本では柿の熟したのは商品価値がなくなってしまうはずだ。わたしの米沢あたりだったら、家の庭の柿が熟しても家族みんなでおいしくいただくということはあるにはあるが、八百屋の棚に並ぶことはないだろう。しかし考えてみればこれもおかしなことである。食べておいしいものなら、店で売っていてもおかしくないんじゃないの。
 以来わたしは、カムホンシ(熟した柿)の大ファンになり、毎年欠かさず食べている。とろっとしてまろやかで甘みがあってコクがあり、赤みがかったオレンジのその光沢も、おいしさに拍車をかける。カリカリする柿にはない独特の味わいがある。こんなおいしいものを日本では捨てているのだろうか。もったいない。捨てる前に韓国にもって来てほしい。いっしょに食べるなり、いい値で売るなりしようではないか。
 話はちょっと飛んでしまうが、ふと「カチバプ」ということばを思い出した。「カチ」というのは辞書を見ると「カチガラス」と出ている。日本ではほとんど見られない鳥だと思う。少なくともわたしの米沢にはいなかった。黒と白の模様を持つカラスのような大きさの鳥である。韓国では山にもいるし、家々の近くにも住む非常に親近感のある鳥である。「バプ」というのは「ごはん」のことである。したがって「カチバプ」というのは、「カチの食べるごはん」という意味になる。晩秋、柿を収穫するわけだが、木になった柿の実を収穫するときに、実のすべてを収穫するのではなく、二,三個から数個、木にそのまま残しておくのである。これは「カチ」たちがひもじい思いをしないように「さあ、お食べ」という気持ちで残しておく習慣があるというので
ある。これを「カチバプ」というのであるが、なんと美しい心根(こころね)であろう。高麗大での韓国語勉強のときの教科書に載っていた内容であるが、非常に強い印象としてわたしの頭の中に残っていて、今でも毎年秋のおわり、熟れた赤い柿の実を見ながら、「カチバプ」ということばを一人口ずさんでみるのである。


                      『おしょうしな韓国』より)

こちらで生活していて「あれっ」と思うことがままあるが、熟した柿が商品として八百屋の棚にちょこんとおいてあるのを見たときにはさすがに驚いたものだ。はじめは、八百屋のおやじが、商売がうまくいかないために、柿があんなにぶよぶよになるまでほったらかしておいてあるものと思っていた。ところが、秋のその季節になると、どこの八百屋にも熟したが柿が並ぶのである。おかしいな、それにしてもやる気のない八百屋が多すぎやしないか。どうも不思議に思い、妻に聞いてみた。韓国生活三年目ぐらいだったかと思う。

 「あれはれっきとした商品よ。カムホンシ、おいしいじゃない。」

 「ええ!? あれ、売り物なんだ」

  たしかに食べたらおいしかろう。しかし想像だにしていないことだった。日本では柿の熟したのは商品価値がなくなってしまうはずだ。わたしの米沢あたりだったら、家の庭の柿が熟しても家族みんなでおいしくいただくということはあるにはあるが、八百屋の棚に並ぶことはないだろう。しかし考えてみればこれもおかしなことである。食べておいしいものなら、店で売っていてもおかしくないんじゃないの。
 以来わたしは、カムホンシ(熟した柿)の大ファンになり、毎年欠かさず食べている。とろっとしてまろやかで甘みがあってコクがあり、赤みがかったオレンジのその光沢も、おいしさに拍車をかける。カリカリする柿にはない独特の味わいがある。こんなおいしいものを日本では捨てているのだろうか。もったいない。捨てる前に韓国にもって来てほしい。いっしょに食べるなり、いい値で売るなりしようではないか。
 話はちょっと飛んでしまうが、ふと「カチバプ」ということばを思い出した。「カチ」というのは辞書を見ると「カチガラス」と出ている。日本ではほとんど見られない鳥だと思う。少なくともわたしの米沢にはいなかった。黒と白の模様を持つカラスのような大きさの鳥である。韓国では山にもいるし、家々の近くにも住む非常に親近感のある鳥である。「バプ」というのは「ごはん」のことである。したがって「カチバプ」というのは、「カチの食べるごはん」という意味になる。晩秋、柿を収穫するわけだが、木になった柿の実を収穫するときに、実のすべてを収穫するのではなく、二,三個から数個、木にそのまま残しておくのである。これは「カチ」たちがひもじい思いをしないように「さあ、お食べ」という気持ちで残しておく習慣があるというのである。これを「カチバプ」というのであるが、なんと美しい心根(こころね)であろう。高麗大での韓国語勉強のときの教科書に載っていた内容であるが、非常に強い印象としてわたしの頭の中に残っていて、今でも毎年秋のおわり、熟れた赤い柿の実を見ながら、「カチバプ」ということばを一人口ずさんでみるのである。

                                                           『おしょうしな韓国』より)

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コメント

ながつきとうか様、お久しぶりです。
岐阜が柿の産地でしたか。
お祖母さんから
「最後に1個は残せ」と、教えられたんですね。
この教えは、わが山形・米沢のほうでは
ないんじゃないかと思います。
自然を労わる気持ちの表われだと思います。
おもしろいですね。

柿も様々

お久し振りです。
当地岐阜は柿の一大産地ですから、コメントしたくなりました。
西日本で栽培されている過半は「富有柿」で、原産地は岐阜県本巣郡(今は町村合併で2つの市と1つの町に)ということもあって、本巣郡とその周辺で盛んに栽培されています。
他に有名なのは「蜂屋柿」で、これは本巣郡と随分離れた所にあり、極狭い地区での栽培です。
「富有柿」は、ぶよぶよにして売るものではありませんが、冷凍保存して今頃に解凍し、ぶよぶよのものが売られることがあります。また、晩秋に、果物店では、別品種でしょうが熟すとぶよぶよする柿が売られてもいます。
いずれの場合も、どちらかと言えば珍しいものということになりましょう。なお、自家用としては、歯の悪いお年寄りのため、少々ぶよぶよするまで生らしておくことが多いです。次に、岐阜で有名なのが「蜂屋柿」。これは干し柿にするのですが、かなりでかいもので、干し柿と言ってもぶよぶよしています。これは非常に高価なものです。
ということで、当地岐阜には、ぶよぶよした柿がありますが、販売量は普通の柿の1%にもならないでしょうね。
小生の好みは硬い柿。ぶよぶよは「蜂屋柿」であっても敬遠します。
もう一つの話題、柿の木に最後に2、3個残す風習。これは当地にもあります。ただし、「1個は残せ」であって、2、3個の場合は取りにくい小さな柿となることが多い感がします。
これは鳥へのお裾分けということではなく、柿の木を丸裸にしては柿の木に申し訳ない。完全に熟して自然に種が落ちるのを柿の木は求めている。毎年、人に豊かな実りを与えてくれる柿の木であるからして「最後に1個は残せ」と、子供の頃にお祖母さんに教えられました。よって、今でもそうしている小生です。
鳥のバカヤロウ!どんだけ食ったら気が済むのだ!
うちの柿の木の鳥害は高々1割程度ですが、鳥のために残すなんて思っても見ません。
鳥害は初期に集中し、残した1個は最終的には鳥に突かれる感がしますが、それは何日も経ってからですね。うちでは。

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Author:treenamu
韓国在住の日本人で、山歩きやサッカー、リフティングなどが好きです。小説・随筆なども書いてます。鴨長明、ヘッセ、バルザック、モーム、チャンドラーなどが好きです。スローライフがモットーです。

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