天安からアンニョン

日々の思いや韓流情報などをエッセイ風に書きます。韓国からの発信です。

セキ、イセキ、コセキ _ 筆者のエッセイ0016

 セキ、イセキ、コセキ。日本人の名字である。それぞれ「関」「井関」「小関」と書く。
この名字の人に対してわたしがなにかの恨みがあるわけではないが、これらの発音は
韓国語では「ヨク」といって、ののしりことば、けんかことばに相当するものなのである。

  セキは多少つまる音を入れるように「セッキ」、イセキは「イセッキ」といえばほぼ完璧な
ヨク(※)となる。つまりセッキとかイセッキということばは、「この野郎」とか「てめえ」とか
「きさま」とか「くそ野郎」などということばなのである。コセキは愛敬でいれてみた。
コセキに相当するヨクは直接にはないが、コセキというとたいていの韓国人は笑って
しまうのだ。セキ(セッキ)という発音部分があるからだろう。
よくもこれだけ韓国語のヨクと似た発音の名字が日本にはあるものだなあ、と
感心してしまうほどだ。

 昔、韓国の日本大使館に「イセキ」さんという人が勤務していたらしい。
彼は韓国にはとてもおられず3か月で日本に帰ってしまったというエピソードが伝わって
いるが、真偽のほどはよくわからない。


   韓国語に「ヨク」が多いということは、言語学の世界ではよくいわれている。
ヨクを言い合うことで大きな争いを未然に防いでいるともいう。
ことばを吐き出すことで早めにすっきりしてしまうというわけだ。無言で肚に溜めておいて、
あとでいきなり爆発してしまう傾向のあるどこかの国とは若干の差があるようだ。

 ヨクということではロシア語が世界一という。
詳しくはわからないがゴーリキーの本にそうあると、日本人作家(翻訳家)の
米原万里さんがどこかの本に書いていたように記憶している。


 そのほか、すごろくやゲームでの「アガリ」、サムライの「チョンマゲ」、
犬の一般的な名前の「ポチ」、「ぼちぼち行くか」の「ぼちぼち」なども韓国社会で
口にするには、いささか緊張をともなうことばたちだ。アガリは口(くち)の意味で
口の下品なことば、チョンマゲは「おっぱいをおおうもの」という意味になるらしい。
ポチまたはボチは、女性性器を意味する俗語と非常に音が近い。
日本語教材には
ときおり、「犬のポチがはしゃいでいます」とか「それじゃぼちぼち出かけますか」、
はたまた「このグラウンドはもともと墓地(ぼち)でした」などという文章が載っている。
授業中こんな文章に出会うと、そのたびにハッとなってしまう。
しかしそこでつかえたりどもったり笑ったりしたらそれこそ手におえなくなってしまうから、
わたしはいつもわざとなんでもないという風なよそおいで、さっと読み飛ばしている。
学生らも「あれっ」とは思うのかもしれないが、発音が瞬間的に消えさってしまうために
そこで何か問題になったことは今のところまだない。

  その他では、「ちょっと待ってください」という発音を聞くと、韓国人はほとんど
笑ってしまう。これは「ちょっとまって」までの部分が、男性性器あるいはおっぱい同士を
くっつけあいましょう、という意味になるからである。

  ことばというものは、奥が深くて実におもしろいものである。しかし公式な場面で失敗し
ないためには、あらかじめこうしたことばを知っておく必要があるかもしれない。


(※)ヨク:
悪口と訳されることもあるが、悪口というのは人のことを悪く言う表現である。
ここで言う「ヨク」は、ことばそのものがえげつなく、下品できたないことばなのである。
悪口とは意味がちがう。「ののしりことば」ぐらいが一番ふさわしい訳語ではないかと思うが、
韓国生活26年を越える今も、「ヨク」のもっともふさわしい日本語表現がまだわからないのである。

参考→ ヨク_ 筆者のエッセイ0002(2013-12-21)
                                          

                                                                (『おしょうしな韓国』より)



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コメント

いろいろのヨク

日本語だったら、ヨクっていうのは
どうなりますかね?
「くそ」とか「ボケナス」なんてのが
それに当たるものでしょうか。

ロシア語のヨクとか、
ユダヤ人(イディッシュ語)のヨクとか、
少し知りたいですね。

>でも、その種の言葉が多くあるということは、その言葉自体の毒が薄まってしまい、
>その語感の本来の強烈さに少し鈍くなっている、ということは無いのでしょうか。

おもしろいご指摘ですね^^
「その強烈さに少し鈍くなっている」という面は
あるかと思います。
若干方向が違いますが、日本語でも「死にそう」なんて表現は、
実際の「死ぬ」とはだいぶカンジは違ってますよね。

また、このこと(ヨク)とは違いますが、
上等のことばがだんだん下等化されるっていう現象も
ありますよね。
「君」は王様などの権力者のことだったはずですが、それが
今は「あなた」といった意味ですし、
「貴様」は、「あなたさま」だったはずですが、
今は「てめえ」ぐらいの意味になってますよね。
「ことばの下等化」といったらいいような現象が
ことばの世界には見えると思います。
ことばっていうのは、ほんと、おもしろいものだと
つくづく思っています。

ヨクはよくない?

イセキ農機や積水ハウス、落語の「一席申し上げます」もダメでしょうかね。(笑)

>ヨクを言い合うことで大きな争いを未然に防いでいるともいう。
普段ヨクをよく使えばストレスが溜まらない、という生活の知恵なんですね。
でも、その種の言葉が多くあるということは、その言葉自体の毒が薄まってしまい、
その語感の本来の強烈さに少し鈍くなっている、ということは無いのでしょうか。

社会主義であった旧ソ連の侮辱語が一番多いというのは分かるような気がします。
流浪の民ユダヤ人のイディッシュ語にも多いという話を聞いたことがありますが、
独裁支配や他国の干渉を長く受けてきた国民には、苦い共通点がありそうです。

「毒をもって毒を制す」のがいいのか、「和をもって尊し」とするのがいいのか、
という話でもなさそうですが、侮辱語とは、聞くのも言うのもイヤな言葉ですね。

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韓国在住の日本人で、山歩きやサッカー、リフティングなどが好きです。小説・随筆なども書いてます。鴨長明、ヘッセ、バルザック、モーム、チャンドラーなどが好きです。スローライフがモットーです。

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