天安からアンニョン

日々の思いや韓流情報などをエッセイ風に書きます。韓国からの発信です。

愛の「オドゥオジダ」 _ 筆者のエッセイ24

 わたしの妻は韓国人である。はじめて妻と会ったとき韓国語がわからず、妻も日本語がわからなかった。それでわたしたちが会話をする時は、英語で行なったものだ。というと、英語の実力が相当のもののように聞こえてしまうが、なんのことはない、たとえば
"What do you like?"
"I like moca-coffee."
といった対話なのである。おどろくほどのことはない。 

  わたしはいつもメモ帳をもっていて、ひとことでも韓国語を学ぼうと構えていた。結婚して数日しか経ってなかったころの話しだ。わたしたちは彼女のふるさとであるキョンジュ(慶州)のボムンダンジ(普門団地)という観光地の喫茶店でコーヒーを飲んでいた。ボムンホ(普門湖)という大きな湖のそばの喫茶店である。午後の明るさからだんだんと夕方の時刻に移り変わるころだった。日が沈みはじめ西の空は赤く鈍色(にぶいろ)の光をはなちはじめ、だんだん夕やみがせまりつつあるころ。わたしはあまりにも静かで美しいその雰囲気のなかで、なにをか言おうとした。愛する女性を目の前においてこのような雰囲気にあったら、だれでも愛のことばのひとつも言ってみたくなるのは当然と言えよう。しかしわたしは韓国語はほとんでできない状態、英語だってこんなときにふさわしい気の利いたフレーズがポンと飛び出すような実力はない。それで韓国語で「だんだん暗くなってくるね」ぐらいのことばでも発したいと思った。しかしながらそんなことばさえわからないのである。メモ帳に英語を書き、絵をかき、「暗くなる」の「~になる」の部分が韓国語でどういう表現になるのかを知ろうとした。あの手この手を使い四苦八苦しながらしきりに妻に聞くのだが、「暗い」はわかっても「暗い」プラス「~になる」つまり「暗くなる」がどうしてもわからないのだ。お互い相手のことばを知らないのだから、これもいたしかたのないこと。そのときどのようなハズミで「暗くなる」がわかったのか今となっては思い出せないのだが、とにかく韓国語で「暗くなる」つまり「オドゥオジダ」という表現を彼女の口から絞り出せたのである。数時間の苦労の末だった。

   わたしはそのようにして学んだ「暗くなる」(オドゥオジダ)という単語を、頭の奥深く・心の奥深くにしっかりと刻み込んだ。変化を表す「~になる」ということば、これは韓国語で「~ジダ」ということばなのだが、このことばを見るたびに、わたしは「愛のオドゥオジダ」を思い出し、しばし甘い夢想に身をまかすのである。


(※)キョンジュ:漢字では「慶州」。韓国の南の港町であるプサン(釜山)から北に車で約1時間のところにある歴史的な町である。BC57∼AD935年までの約1000年の間栄えた新羅(シンラ、日本名シラギ)の首都である。「シンラ千年の古都キョンジュ」ということばがよく使われている。特に仏教が有名であり、いまでも山のあちこちの自然の岩に、仏像の彫刻が数多く残されている。お寺では仏国寺(ブルグクサ)などが有名であり、石の洞穴の中に巨大な仏像が安置されている石窟庵(ソクラム)も観光コースの定番となっている。歴史の街として日本の奈良市と姉妹血縁の関係を結んでいる。国内および海外からの観光客が一年を通して絶えない。


                                                               (『おしょうしな韓国』より)

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Author:treenamu
韓国在住の日本人で、山歩きやサッカー、リフティングなどが好きです。小説・随筆なども書いてます。鴨長明、ヘッセ、バルザック、モーム、チャンドラーなどが好きです。スローライフがモットーです。

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